「親とさよならする前に-親が生きているうちに話しておきたい64のこと-」という本をご紹介します。
この本には、いずれ必ず訪れる親の死や介護をするときに、大切なことが実行可能なところまで掘り下げて書かれています。
この本は「親が元気なときに聞いておく」といい64の項目で構成され、その話が十分にできていないと、実際にどういうトラブルになるのかも説明。
この本の見どころを紹介しますので、せひ、最後までお読みください。
著者紹介
著者の清水昌子さんは日本クオリティオブライフ協会で代表理事をされています。
その前は元葬儀社の役員をされ、年間1,000件以上の葬儀・供養の相談に携わられた経歴をお持ちの方です。
著者は葬儀社での相談の中で、数多くの人生の終末期に苦しむ遺族の姿を見てきました。
また、著者自身が祖母の成年後見人になり、そのときになって「祖母のことを何も知らなかった」ことに気がつき、多くの苦労をされたそうです。
そして、その祖母が亡くなったときには、「私の対応は本当に正しかったのだろうか。祖母のことを本当に理解していたのだろうか」と自分を責め続けたそうです。
このような経緯で終活の必要性を伝えるために、日本クオリティオブライフ協会の設立に至ったとのことです。
親のことをどれだけ知っていますか?
誰でも自分の肉親である親のことは、大体わかっていると思っているのではないでしょうか。
この本を読むと、自分が親のことをわかっていた「つもり」であったことがよくわかると思います。
たとえば、
親が自分の葬儀に呼んで欲しい友人の連絡先を知っていますか。
どんな介護を望んでいるか知っていますか。
延命治療について何を望んでいるかご存じですか。
親のことを十分に知っていないとどういうことになるか?
親の葬儀で呼ぶ人と連絡先が整理されていないと、親族の中でも私は呼ばれなかったというトラブルになる可能性があります。
介護や延命治療について、親に代わって自分が決定しなければならないこともあります。
そのとき「親の気持ちは聞いていないけど、私の判断は正しかったのだろうか?」と悔やむようなことにはなりませんか。
典型的なトラブルは遺産相続をめぐる骨肉の争い。
遺産が大きい人はあらかじめ遺言を作っていることが多いそうです。
トラブルになるのは、うちにそんな遺産はないと思っている人たちなのです。
亡くなった親は、自分の遺産相続で家族がもめる姿を望んでいないでしょう。
親が生きているうちに話しておきたい64のこと
「体と心の話」で親とコミュニケーションを深めながら、親の健康状態を把握することの大切さ。
「病気・介護の話」では、親の病気や介護に備えること。
「お墓・お葬式の話」では具体的な遺骨の行き場の話、葬儀社の話が書かれています。
「お金の話」では親の財産や保険などを聞き、病気や介護に備えることを薦めています。
「相続の話」のパートでは、遺産相続のトラブルを回避するための方法が。
最後の「実家の片づけの話」は多くの人が先送りにしている問題ではないでしょうか、この解決方法も具体的に書かれています。
これらを親の認知機能がしっかりとしているうちに、話し合うことが大切だと筆者は書いています。
体・心の話
普段、親とどれくらい接していますか。
親の身体に触ることがありますか。
実際に触ってみると身体が細くなったなあと親の老化を実感するそうです。
そして、親の身体に触るというのは、介護へ向けた準備でもあるのです。
また、親の病歴や今の病気、飲んでいる薬を知っていますか。
本では親と一緒に健康診断の結果やお薬手帳を見たらよいと書かれています。
病院の付き添いもよいそうです。
そうやって、親とのコミュニケーションを深めていく過程で、親にエンディングノートを薦めるとよいと。
親自身も自分がどんな最期を迎えたいのかはっきりしてきます。
そうすることにより、親の望みを子どもも共有できます。
そして何よりも、親に育ててくれて「ありがとう」と具体的に伝えることが大事です。
65歳以上の高齢者の5人に1人に認知機能の低下があるといわれます。
ぜひ、残されたものが後悔しないように、親に感謝の言葉を伝えたいですね。
病気・介護の話
病気の話ではまず、認知機能が一番の心配事です。
親とコミュニケーションをとっていれば、早い段階で親の認知機能の低下に気づけるそうです。
初期段階であれば服薬で回復が望めることもあるので、まずは予防ですね。
そして、万が一、親が認知症になったときのために、認知機能がしっかりしているうちに決めておくとよいことがあると。
いざというときに親の代理で判断できる人を家族の間で決めておく、身体が不自由になったときに親は在宅介護を望むか確認しておく。
親と一緒に介護施設を見学しておくこともいいそうです。
その他、実際に介護認定を受けてからの流れについても詳しく書かれています。
お墓・お葬式の話
お墓については、親と一緒に墓参りへ行くことを薦めています、そこで自分の家の宗教や、今までお寺にお布施や戒名料として納めた金額も知っておいた方がよいと。
また、どんなお葬式にしたいのかも聞いて、事前に見積もりをとって、葬儀社を決めておくとよいと。
たしかに、心配事がひとつ減りますね。
葬儀のあと、火葬に立ち会う親族は6親等までの親族です。
親戚同士で、呼んだ、呼ばれていないというトラブルを避けるため、あらかじめ連絡先を整理しておくとよいと。
お金の話
お金の話は身内でも避けてしまいがちなこと。
しっかり親と話す必要がありそうです。
なぜかといえば、親自身の入院費用や介護費用、老後の生活費にあてる資産を親が持っているか確認するためです。
後の相続のときも関係してくるので、どの銀行にどの口座があるまで調べたら楽になるとも。
また、分けるのが難しい家や土地など不動産は、遺産相続の火種になりやすいので、誰が相続するかを決める。
または、親が生きているうちに現金化した方がいいそうです。
親の加入している保険は、種類・契約者・受取人を確認しておくとよいとのこと。
保険の内容が現状にあっていなかったり、重複していたりすれば保険の見直しを。受取人が配偶者のままで変更されていないこともあるそうなので、子どもに変更しておく。
保険の受取人は相続とセットで考えるといいとのこと。
親がマイナスの財産、つまり借金を抱えていないかも確認が必要だそうです。
借金が多い場合は親に自己破産してもらう選択も。
また、相続自体を放棄する方法もあるそうです。
そんな事実がわかったら専門家に相談した方がよさそうですね。
相続の話
相続の問題も先手先手で確認していく方がよいようです。
誰が相続人になるのか?親は誰に相続させたいと思っているのかがわかるからです。
親の認知機能がしっかりしているうちに、成年後見人を選んでおくと、いざというときに判断ができるので活用したいですね。
また、公証役場で公正証書遺言を準備してもらうのがオススメとのこと。
遺言書があっても十分に対応できないこともあるそうです。
たとえば、10年間、ひとりで親を介護した娘がいて、親が遺言で土地・家屋を娘に残すようにしたとします。
それでも他の相続人がその相続を不服に思い、遺留分(遺産の一定割合)を請求されることもあるそうです。
そして、遺留分を支払うために、家を手放す結果になることも。
対策として、親にあらかじめ遺留分に相当するものを現金や生命保険で確保してもらうことを薦めています。
一所懸命介護してきたのですから、介護したことに相当する遺産相続を親に頼むことは恥ずべきことでなく、堂々と主張したらよいとも書かれています。
実家の片づけの話
実家の片づけ。
この言葉を聞くと、気が重くなる人も多いのではないかと思います。
著者は1日でも片づけに早く着手して、1年かけてゆっくり片づけることを薦めています。
急にものを片づけると、そのものは親にとっては思い出ですから、喪失感を覚えてしまうそうです。
「使うもの」、「思い出のもの」、「廃棄」。
そして「保留」と分けて、「保留」の中から使わなかったものを捨てていく。
ときには思い出のアルバムを親と一緒に見るくらいのペースでゆっくり片づけましょうと。
片づけの目的は「親の老後の安全と安心を確保」することです。
親がつまずかないか。
車いすが通れるくらいのスペースが通路に確保できているか。
また、何も置かない6畳部屋の確保を薦めています。
その理由は将来、自宅介護をすることになったときのため、介護ベッドやポータブルトイレを設置することに備えてです。
まとめ
ここまで、「体と心の話」、「病気・介護の話」、「お墓・お葬式の話」、「お金の話」、「相続の話」、「実家の片づけの話」に分かれているこの本の概略を書いてきました。
この本がすごいと思ったのは、これらが64の項目として実行可能なレベルまで落とし込まれていることです。
しかし、これだけのことはできないと思われる方もいると思います。
その点はご安心ください。
この本に『別冊「もしも」のときに役立つノート』というものがついているのです。
あらかじめ調べておきたい重要なことは、このノートの項目を埋めていくようにすれば、自然に解決できそうです。
私は長男で実家から離れたところに住んでいます。母親は早くに亡くしたので、今は79歳の父が実家で一人暮らしをしています。おかげさまで身体の不自由もなく、認知機能に問題はありません。
母、祖父、祖母の順に見送ってきた私ですが、父の老後にすべきことをほとんどしていないことに気がつきました。
3人兄妹の男ひとりの長男なのに。
たしかに親と離れて暮らしていると難しいなと思うこともあります。
しかし、急に親の介護がはじまることを考えたら、帰省の機会などを利用して少しずつ親と話し、準備を進めていった方が絶対にいいと思いました。
この本は親のためでもありますが、実は子どもが、いざというときに大変な思いをしないで済むように書かれています。
ぜひ、私と同じように高齢の親がいる人には読んで欲しいと思います。
それが親のため、結果として自分のためになるのです。