大切なご家族とのお別れは、突然やってくるものです。 深い悲しみの中にいるときであっても、葬儀の準備や費用のことなど、現実的な問題と向き合わなければならないのは、本当にお辛いことだと思います。
「葬儀費用はいったいくらかかるのだろう?」と不安になって検索してみても、サイトによって金額がバラバラで、余計に混乱してしまったのではないでしょうか。
実は、インターネット上で目にする格安プランの金額と、実際に支払う「最終総額」には大きな開きがあることがほとんどなのです。
この差が生まれる仕組みを知らないまま契約してしまうと、後から想定外の追加請求が発生し、大切な最期の時間を後悔とともに過ごすことになりかねません。
この記事では、長年葬儀業界に携わってきたプロの視点で、見積もりの落とし穴や追加費用を防ぐための具体的なチェックポイントを包み隠さずお伝えします。
ご家族が安心して故人様をお送りできるよう、費用の不透明さを取り除き、納得のいくお見送りの手助けとなれば幸いです。
まずは、葬儀費用の全体像から一緒に見ていきましょう。
目次
葬儀費用の平均相場と実態|プラン料金と「最終総額」に差が出る理由

「葬儀一式 〇〇万円」という広告を見て、「これなら予算内で収まりそうだ」と安心されたことはありませんか?
しかし、いざ見積もりをとってみると、広告の金額の2倍、あるいは3倍の総額を提示されて驚愕したというご相談は、残念ながら後を絶ちません。
なぜ、これほどまでにプラン料金と実際の支払額に差が出てしまうのでしょうか。
それは、葬儀社の提示するプラン料金が、葬儀を行うために必要な費用のほんの一部しかカバーしていないケースが多いからです。
初めて喪主を務める方の多くが、葬儀費用の仕組みが複雑であるために、「何が含まれていて、何が含まれていないのか」を判断できずにいます。
葬儀費用には、必ずかかる「固定費」と、状況によって大きく変わる「変動費」が存在します。
この章では、費用の全体像をクリアにするために、まずは「葬儀費用の3つの構成要素」について詳しく解説していきます。
ここを理解するだけで、提示された見積もりが適正かどうか、ご自身で判断できるようになりますよ。
1-1. 葬儀費用の総額は「3つの内訳」で構成されている
葬儀費用の総額が不透明になりがちな最大の原因は、支払先や性質の異なる費用が混在していることにあります。
まず覚えていただきたいのは、葬儀費用は大きく分けて「葬儀一式費用」「飲食接待費」「宗教費用」の3つの柱で成り立っているという事実です。
これら3つは、それぞれ支払うタイミングや支払先が異なる場合が多く、葬儀社のプラン料金に含まれているのは、通常この中の「葬儀一式費用」だけであることがほとんどです。
全体像を把握しやすいよう、それぞれの内訳を表にまとめましたのでご覧ください。
| 費用の内訳 | 主な内容 | 費用の性質 |
|---|---|---|
| ① 葬儀一式費用 | 祭壇、棺、骨壺、式場使用料、搬送費、人件費など | 葬儀の規模やプランによって決まる基本料金。 |
| ② 飲食接待費 | 通夜振る舞い、精進落とし、返礼品、香典返しなど | 参列者の人数によって増減する変動費。 |
| ③ 宗教費用 | お布施(読経料、戒名料)、お車代、お膳料など | お寺や神社へ直接渡す謝礼(見積もり外が多い)。 |
いかがでしょうか。
広告でよく見る「格安プラン」は、上記の表でいうところの「①葬儀一式費用」の一部をパッケージ化したものに過ぎないことが多いのです。
つまり、実際にはここに参列者の人数分だけかかる「②飲食接待費」や、お坊さんにお渡しする「③宗教費用」が加算されます。
例えば、葬儀一式が50万円だったとしても、参列者が多くて飲食費が30万円、お布施が40万円かかれば、最終総額は120万円になります。
「葬儀代」とひとくくりにせず、この3つの箱を別々に考えることが、予算オーバーを防ぐための第一歩です。
特に「お布施」や「飲食費」は、葬儀社の見積書には「別途」と書かれているか、概算で安く計上されていることが多いので注意が必要です。
1-2. 広告の「格安セットプラン」に含まれていない費用の正体
最近では「8万円〜」「15万円〜」といった、驚くほど安価な葬儀プランをインターネットで見かけるようになりました。
経済的な負担を少しでも減らしたいご遺族にとって、こうしたプランは非常に魅力的に映るはずです。
しかし、プロの視点から正直にお伝えすると、こうした格安セットプランだけで葬儀を完結させることは、現実的には非常に難しい場合が多いのです。
なぜなら、セットプランには「葬儀を行うための最低限の物品」しか含まれておらず、実際の現場で必ず必要になる項目がオプション扱いになっているケースがあるからです。
具体的に、どのような費用が「プラン外」として追加請求されやすいのかを見ていきましょう。 代表的なものとして、以下の項目が挙げられます。
▼ ここが追加費用の落とし穴
- ドライアイスの追加料金:
プラン規定日数を超えると1日あたり1〜2万円が加算されます。 - 長距離の搬送費用:
病院から安置場所までが規定距離(10km等)を超えると追加対象です。 - 安置施設の利用料:
自宅安置ができない場合の施設料は、プラン外の実費請求が一般的です。
このように、ご遺体の状況や火葬場の空き状況といった「不確定要素」にかかる費用は、あらかじめ安価なパッケージに含めることが難しいのです。
その結果、契約後に「ドライアイスが足りない」「日数が延びた」といって次々と追加費用が発生し、最終的にはプラン価格の2倍以上になってしまうというトラブルが後を絶ちません。
「安さ」だけで飛びつくのではなく、「その金額の中に、火葬までにかかる全てが含まれているのか?」と、担当者に厳しく確認する姿勢が大切です。
特に、「追加料金一切不要」という言葉には条件があることが多いため、小さな文字で書かれた注釈までしっかりと目を通すようにしましょう。
1-3. 全国平均は約〇〇万円?相場データを見る際の注意点
葬儀費用を検討する際、多くの方が「みんなはどのくらいお金をかけているのだろう?」と、平均相場を気にされます。
インターネットで検索すると、「葬儀費用の全国平均は約110万円」や「約200万円」といったデータが出てくるかと思います。
しかし、ここで一つ冷静になっていただきたいのは、「平均値」が必ずしもあなたのケースに当てはまるわけではないということです。
この「平均」という数字には、数百名が参列する大規模な社葬や一般葬から、ご家族数名だけで行う直葬(火葬式)まで、全く性質の異なる葬儀がすべて混ざっています。
例えば、100人が参列する一般葬では、飲食接待費やお返し物だけで数十万円かかりますが、家族5人だけの家族葬であれば、それらの費用はほとんどかかりません。
これらを足して割った「平均値」を鵜呑みにして、「うちは平均より安いから大丈夫」あるいは「平均より高いから損をしている」と判断するのは危険です。
大切なのは、世間一般の平均額ではなく、「あなたが希望する形式(家族葬、一般葬、一日葬など)」の相場を知ることです。
近年では、コロナ禍の影響もあり、小規模な家族葬が主流となってきています。
そのため、数年前のデータ(平均200万円近くあった時代)を参考にしてしまうと、必要以上に予算を大きく見積もってしまうことになります。
また、地域による差も見逃せません。 相互扶助の精神が強い地域では、近隣住民への振る舞いが手厚くなるため飲食費が高くなる傾向がありますし、都市部では式場使用料が高額になりがちです。「平均」という言葉に踊らされず、「自分たちが誰を呼び、どのようなお別れをしたいのか」を軸に予算を組み立てることが、後悔のない葬儀への近道です。
次章からは、見積もりの段階で特に見落としがちなポイントについて、さらに深掘りして解説していきます。
見積もりチェックのプロ技|追加費用が発生しやすい「変動項目」の盲点

葬儀社から最初の見積もりを受け取ったとき、そこに書かれている金額はあくまで「予定価格」に過ぎないことをご存知でしょうか。 多くのご遺族が、葬儀が終わった後の請求書を見て「見積もりよりも金額が増えている」と驚かれますが、これは葬儀社が悪意を持って騙しているわけではありません。
葬儀費用には、ご逝去から火葬までの日数や、当日の参列者の人数によって金額が上下する「変動項目」が多く含まれているからです。 最初の見積もり段階では、まだお亡くなりになっていないことも多く、正確な日時や人数が確定していないため、葬儀社側も「最低限の数量」や「概算」で計算せざるを得ないという事情があります。
しかし、ここが最大の落とし穴です。 悪質な業者でなくとも、変動項目を少なめに見積もっておくことで、見かけの総額を安く見せようとする心理が働くことは否定できません。 結果として、実際の葬儀では「日程が延びた」「人が予想より来た」という理由で、雪だるま式に追加費用が発生してしまうのです。
プロの視点から言えば、見積もりを見る際は合計金額を見るのではなく、「変動する可能性のある項目」が現実的な条件で計算されているかをチェックすることが何より重要です。 ここでは、特に追加費用が発生しやすい3つのポイントに絞って、その防ぎ方とチェック方法を解説します。
2-1. 安置日数とドライアイス料金:予期せぬ日程延長のリスク
葬儀の見積もりにおいて、最も見落とされやすく、かつ高確率で追加費用が発生するのが「安置に関連する費用」です。 日本では法律により、死後24時間は火葬ができないと定められていますが、実際には火葬場の空き状況やご家族の都合、友引などの関係で、亡くなってから葬儀・火葬を行うまでに数日から1週間程度待機するケースも珍しくありません。
特に都市部においては、人口に対して火葬場の数が不足しているため、「火葬場が1週間待ち」という事態も日常的に起きています。 しかし、多くの格安プランや初期見積もりでは、安置にかかる費用やご遺体を守るためのドライアイス代が「1日分」あるいは「2日分」しか含まれていないことがほとんどです。
もし、火葬まで5日待つことになった場合、プランに含まれる分を超過した3日〜4日分は、すべて追加料金として請求されます。
具体的には、以下のような項目が日数分だけ加算されていきます。
- ドライアイス追加料:1日あたり約8,000円〜15,000円。ご遺体の状態を守るためには絶対に削れない費用です。
- 安置施設利用料:ご自宅に安置できない場合、専用施設を借りますが、1日あたり10,000円〜30,000円ほどかかります。
- 付き添い費用:施設によっては、故人様に付き添うための部屋代や布団代が別途かかることがあります。
仮に施設利用料とドライアイス代で1日3万円かかるとすれば、3日延びるだけで約10万円近い想定外の出費となります。
これを防ぐためには、見積もりの段階で葬儀社に「この地域の火葬場の混雑状況はどうですか?」と必ず確認してください。
そして、「もし火葬が〇日後になった場合、追加費用はいくらかかりますか?」とシミュレーションしてもらうことが大切です。
「最短日程」ではなく「現実的な日程」で見積もりを作り直してもらうだけで、費用のブレを大幅に減らすことができます。
プロの助言:見積もり時の「魔法の質問」
見積もりをお願いする際は、担当者に「この地域だと、火葬まで平均何日待つことが多いですか?」と聞いてみてください。
もし「平均4日」と言われたら、最初からその日数分のドライアイス・安置料を入れた見積もりを作ってもらうのが、追加費用を防ぐ一番のコツです。
2-2. 飲食接待費と返礼品:参列者数で大きく変わる変動費の計算
葬儀費用の中で、見積もりの精度を出すのが最も難しいのが、参列者にお出しする料理(通夜振る舞い・精進落とし)や、香典返しなどの返礼品にかかる「飲食接待費」です。
これらは完全に「参列者の人数」に比例して増減する費用であるため、事前の予測が甘いと、支払い時に大きな誤差が生まれます。
よくある失敗例として、葬儀社が提示する初期見積もりが、ご家族の希望する規模感よりも「少なめの人数」で設定されているケースが挙げられます。
例えば、実際には親族や友人で30人は集まる予定なのに、見積もり上では「家族10名分」で計算されていれば、当然ながら見積もりの総額は安く見えます。
しかし、当日に予想以上の参列者が訪れれば、料理を追加注文したり、返礼品を急遽補充したりする必要が出てきます。
特に料理に関しては、急な追加オーダーは割高になることもありますし、何より「せっかく来てくださった方に食事が足りない」という事態は、喪主として一番避けたい失礼にあたります。
こうしたトラブルを避けるために、プロとしておすすめしている対策は以下の2点です。
- 少し多めの人数で見積もる:ギリギリの人数ではなく、予備を含めて「これくらい来るかもしれない」という最大人数で見積もりを出してもらいましょう。余る分には、返礼品であれば返品可能なものも多いです。
- 返品の可否を確認する:ハンカチやお茶などの返礼品(即日返し)は、使用しなかった分を返品できる契約になっているか必ず確認してください。料理は返品できませんが、乾物は返品可能な葬儀社が多いです。
また、最近の傾向として、コロナ禍以降は「通夜振る舞い(会食)を行わず、折り詰めのお弁当をお持ち帰りいただく」というスタイルも定着しています。 この場合、飲み物代などの実費がかからず、個数管理もしやすいため、予算の管理がしやすくなるというメリットもあります。 形式にこだわらず、ご予算と手間のバランスを見て、担当者と相談してみることをお勧めします。
2-3. お布施・宗教者への支払い:見積もりに記載されない「見えない費用」
最後にお伝えするのは、葬儀社の見積書には決して記載されない、しかし確実に現金で必要となる「お布施」についてです。
仏式の葬儀を行う場合、読経や戒名をいただいたお礼として、お寺様(僧侶)へお渡しする金銭が必要になりますが、これは葬儀社へ支払う費用とは全くの別物です。
「葬儀プラン代金も払ったし、これで安心」と思っていたら、式の当日に「お布施として数十万円を包んでください」と言われ、慌てて銀行に走ったという話は決して笑い話ではありません。
お布施の金額は、地域やお付き合いのあるお寺(菩提寺)の考え方、そして戒名のランクによって大きく異なります。
一般的には、通夜・告別式の2日間の読経と、一般的な戒名をいただいた場合で、数十万円〜が相場と言われることが多いですが、こればかりは「定価」が存在しません。
そのため、資金計画を立てる際には、葬儀社への支払いとは別に、「お布施用の現金」を必ず手元に残しておく必要があります。
お布施に関するトラブルを防ぐためのポイントは以下の通りです。
- 菩提寺がある場合:ご先祖代々のお墓があるお寺がある場合は、直接ご住職に「葬儀のお布施は皆様どのくらい包まれていますか?」と率直に相談するのが一番確実です。最近は「お気持ちで」と言いつつ、目安を教えてくれるご住職も増えています。
- 菩提寺がない場合:葬儀社にお坊さんを紹介してもらう場合は、定額のお布施料金が決まっているサービス(お坊さん便など)を利用できることもあります。この場合は事前に金額が明確になるため安心です。
また、お布施以外にも、「お車代」や「御膳料(食事を辞退された場合にお渡しするお金)」が必要になることも忘れてはいけません。
これらは細かい出費に見えますが、積み重なると数万円になります。
見積もりの「合計金額」だけを見て安心するのではなく、「ここに含まれていない支払いは他に何がありますか?」と担当者に問いかける勇気を持ってください。
その一言が、予期せぬ出費からあなたを守る最大の防御策となります。
葬儀形式別の費用比較|家族葬なら本当に安くなるのか?

「葬儀費用を抑えるために、家族葬にしました」というお話をよく耳にします。
時代の変化とともに、大勢の方をお呼びする一般葬から、身内だけで静かにお見送りする家族葬へと、葬儀のスタイルは大きく変化してきました。
確かに、参列者が少なければ、大きな会場も大量の返礼品も必要ないため、目に見える「請求額」の合計は下がる傾向にあります。
しかし、ここで多くのご遺族が陥りやすいのが、「請求額が安い=自分たちの持ち出し負担も軽い」という誤解です。
プロとして注意を促したいのは、葬儀の形式を選ぶ際には、単に出ていくお金(支出)だけを見るのではなく、入ってくるお金(香典)とのバランス、つまり「実質負担額」を考える必要があるという点です。
「安くなるはずだったのに、計算してみたら意外と負担が大きかった」と後悔しないために、形式ごとの費用の構造と、それぞれのメリット・デメリットを正しく理解しておきましょう。
この章では、代表的な3つの形式について、費用の観点から徹底比較していきます。
あなたのご家庭の事情や予算感に、本当にマッチする形式はどれなのか、冷静に見極めるための判断材料にしてください。
3-1. 【一般葬 vs 家族葬】費用内訳の違いとメリット・デメリット
まずは、従来通りの「一般葬」と、現在主流の「家族葬」の決定的な違いについて、お金の面から見ていきましょう。
一般葬は、職場関係やご近所の方など広く参列者を募るため、飲食費や返礼品代がかさみ、見積もりの総額は高額になりがちです。
一方で、多くの参列者から「お香典」をいただけるため、葬儀費用の一部、場合によっては大半をその香典で賄うことが可能になります。
これに対し、家族葬は参列者が親族に限られるため、飲食費などの変動費は低く抑えられ、見積もりの総額自体は一般葬よりも安くなります。
しかし、ここが重要なポイントなのですが、家族葬ではいただく香典の総額も大幅に少なくなります。
また、「身内だけだから」と香典を辞退するケースも多く、その場合は葬儀費用のほぼ全額をご遺族の貯蓄から捻出(持ち出し)しなければなりません。
わかりやすく比較するために、架空のモデルケースで表を作成しました。 あくまで一例ですが、「実質負担額」の違いに注目してください。
| 項目 | 一般葬(参列者100名) | 家族葬(参列者10名) |
|---|---|---|
| 葬儀費用総額(A) | 約150万円 | 約80万円 |
| 香典収入の目安(B) | 約100万円 (@1万円×100名) | 約10万円 (@1万円×10名) |
| 実質負担額(A-B) | 約50万円 | 約70万円 |
いかがでしょうか。 「総額」で見れば家族葬の方が圧倒的に安いですが、香典を差し引いた「実質負担額」で見ると、逆に家族葬の方が高くなるケースも珍しくないのです。
もちろん、家族葬には「対応に追われず、ゆっくりとお別れができる」という金銭以外の大きなメリットがあります。
しかし、単に「お金がないから家族葬」と短絡的に決めてしまうと、予想外の出費に苦しむ可能性があります。
ご故人様の交友関係の広さや、予想される香典の額もシミュレーションに入れた上で、どちらがトータルでの負担が少ないかを検討することが大切です。
プロの助言:迷ったときの判断基準
金銭面だけで迷っているなら、簡単な計算をしてみましょう。
「予想される会葬者数 × 5,000円(香典返礼品を引いた残金)」が、一般葬にした場合に入ってくる資金の目安です。
これと家族葬の持ち出し額を比べてみて、差が少なければ、ご近所への義理が果たせる一般葬の方が、後々の手間(個別の弔問対応など)が省ける場合があります。
3-2. 一日葬・直葬(火葬式)の相場と選ぶ際の注意点
家族葬よりもさらに費用を抑えたい場合や、宗教的な儀式にこだわりがない場合に選ばれているのが「一日葬」や「直葬(火葬式)」です。
これらは工程を簡略化することで、物理的なコストを大幅にカットできる形式です。
「一日葬」は、通夜を行わず、告別式と火葬を1日で行うスタイルです。 通夜の飲食費や、ご遺族の宿泊費などが削減できるため、家族葬よりもさらに10万〜20万円ほど費用を抑えられる傾向にあります。
遠方から来る親戚にとっても、日帰りが可能になるため、身体的・金銭的負担が軽いというメリットがあります。
一方、「直葬(火葬式)」は、通夜も告別式も行わず、病院や安置場所から直接火葬場へ向かい、火葬のみを行う最もシンプルな形式です。
祭壇を飾らず、式場も借りないため、費用は20万〜30万円前後と非常に安価に抑えることができます。
経済的な事情がある場合や、「形式にとらわれたくない」という故人の遺志がある場合には有効な選択肢となります。
ただし、安易に直葬を選ぶことには重大なリスクと注意点も伴います。
まず、菩提寺(先祖代々のお墓があるお寺)がある場合、お寺に無断で直葬をしてしまうと、「儀式を経ていない」という理由で、お墓への納骨を断られるトラブルが多発しています。
また、心理的な面での後悔も無視できません。 「ちゃんとしたお葬式をしてあげられなかった」「お別れの時間が短すぎて、実感が湧かないまま終わってしまった」という罪悪感(グリーフ)に、後々まで苦しむご遺族もいらっしゃいます。
費用は確かに重要ですが、葬儀は「残された方の心の整理をつけるための儀式」でもあります。
「本当にこの形式で、後悔なく見送れるだろうか?」と、ご家族全員でしっかりと話し合い、お寺様への確認も済ませてから決定することをお勧めします。
3-3. 家族葬でも高くなるケースとは?香典収入と自己負担額のバランス
「家族葬=質素で安い」というイメージを持たれがちですが、実は家族葬だからこそ、かえって一人当たりの単価が高くなり、豪華になってしまうケースがあります。
これは、「最後くらいは良いもので送ってあげたい」というご遺族の想いが、少人数の葬儀では反映されやすいからです。
大人数の一般葬では、全体の予算を管理するために、祭壇や棺のランクを標準的なものに抑えることがよくあります。
しかし、家族葬の場合は、見栄を張る必要がない反面、「浮いた予算で、お父さんが好きだった花を祭壇いっぱいに飾ろう」「棺は最高級の檜(ヒノキ)にしよう」「料理は一番高いランクにしよう」という「こだわり」にお金をかける余裕が生まれます。
これは素晴らしいお見送りの形であり、決して悪いことではありません。
しかし、前述したように、家族葬は香典収入が少ないため、こうしたグレードアップ(オプション追加)の費用は、すべてご遺族の貯金から直接支払うことになります。
また、盲点となりがちなのが「参列を遠慮された方への対応」です。
家族葬を行うと、後日、訃報を知った知人や会社関係の方が、ご自宅へ弔問に訪れることがあります。 その都度、お茶出しをしたり、個別に香典返しを用意したりする手間と費用が発生し、「これなら最初から一般葬にして一度で済ませた方が楽だったし、安上がりだったかも…」と疲弊してしまうご遺族も少なくありません。
家族葬で費用をコントロールするコツは、「予算の上限」を明確に決めておくことです。
「こだわりたい部分」と「節約する部分」のメリハリをつけ、葬儀社の担当者に「総額で〇〇万円以内に収めたい」とハッキリ伝えることが重要です。
感情が高ぶっているときは判断力が鈍りますので、冷静な第三者(少し遠い親戚など)に意見を求めてみるのも良い方法でしょう。
葬儀費用を適正価格に抑える賢い節約術と公的制度

ここまで、葬儀費用の内訳や形式による違いを見てきましたが、「じゃあ、具体的にどうすれば費用を安く、かつ質を落とさずにできるの?」というのが一番知りたいところですよね。
葬儀費用は、車や家と同じくらい高額な買い物であるにもかかわらず、多くの方が知識不足のまま、言われるがままに契約してしまっています。
しかし、ほんの少しの知識と事前の準備があるだけで、数十万円単位で費用を節約することは十分に可能です。
そしてそれは、決して「ケチる」ことではなく、「無駄を省いて、本当に必要なものにお金をかける」という賢い選択に他なりません。
この章では、プロなら誰もが知っているけれど、一般の方は見落としがちな「公的な補助金制度」や「見積もりの比較テクニック」を伝授します。
これらを知っているだけで、葬儀社との交渉力は格段に上がり、納得のいくお見送りができるようになります。
「知らなかった」で損をしないために、ぜひメモを取りながら読み進めてください。 まずは、最も効果の高い「事前のアクション」からご紹介します。
4-1. 事前相談と相見積もりが「最大の防御」になる理由
葬儀費用を適正価格に抑えるための最強の方法、それは間違いなく「元気なうちの事前相談」と「相見積もり」です。
「まだ生きているのに縁起でもない」と思われるかもしれませんが、亡くなってからの病院での数時間は、悲しみと混乱で正常な判断が全くできない状態になります。
病院から「早く葬儀社を決めて搬送してください」と急かされ、慌ててスマホで一番上に出てきた業者や、病院紹介の業者に依頼してしまうと、価格交渉の余地はゼロになります。 葬儀社側もそれを知っているため、言い値での契約になりがちなのです。
対して、事前に相談をしていれば、心に余裕を持って複数の会社を比較検討(相見積もり)することができます。
A社、B社、C社から同じ条件で見積もりを取ると、驚くほど金額や対応に差があることがわかります。
「A社では30万円のプランが、B社では同内容で50万円だった」ということもザラにありますし、見積もりを持って「C社さんはもう少し安くなりますか?」と交渉することも可能です。
また、事前相談をすることで、「会員割引」や「事前予約特典」などが適用され、通常価格から5万〜10万円ほど割引されるケースも非常に多いです。
何より、「この担当者なら任せられる」という信頼できる人を見つけておく安心感は、お金には代えられません。
いざという時に電話一本で駆けつけてくれるプロがいる、その事実が、ご家族の精神的な支えとなります。
無料相談を行っている葬儀社がほとんどですので、散歩がてらホールを見学しに行くだけでも、大きな一歩になります。
4-2. 葬祭費・埋葬料の申請|忘れずに受け取りたい公的補助金・給付金
葬儀が終わった後、忘れずに手続きをしていただきたいのが、国や自治体から支給される「給付金」の申請です。
日本には、亡くなった方が加入していた健康保険の制度から、葬儀費用の一部を補助してくれる仕組みが必ず存在します。
しかし、これらの給付金は「申請主義」といって、自分から役所や組合に申請しなければ、1円も受け取ることができません。
また、申請には期限(多くの場合は葬儀から2年)があるため、うっかり忘れてしまうと受給資格を失ってしまいます。
主な給付金の種類は、故人の加入していた保険によって以下の2つに分かれます。
- 国民健康保険・後期高齢者医療保険の方:「葬祭費」自営業の方や75歳以上の方が対象です。市区町村の役場で手続きをします。支給額は自治体によって異なりますが、3万円〜7万円程度が一般的です。(東京23区は7万円のケースが多いです)
- 社会保険(会社員)・組合健保の方:「埋葬料」会社にお勤めの方やその扶養家族が対象です。勤務先や健保組合へ申請します。支給額は一律で5万円が基本ですが、組合によっては独自の「付加給付」があり、さらに数万円上乗せされる場合もあります。
申請に必要なものは、主に「葬儀費用の領収書(喪主のフルネームが記載されたもの)」や「会葬礼状」など、葬儀を行ったことを証明する書類です。
手続き自体は難しくありませんので、死亡届を出した後や、年金の手続きのついでに、必ず窓口で確認するようにしましょう。
この5万円〜7万円があれば、香典返しの足しにしたり、法要の費用に充てたりと、家計の助けになるはずです。
プロの助言:領収書の宛名に注意!
給付金の申請には「葬儀を行った人(喪主)」の名前が入った領収書が必要です。
よくある失敗が、領収書の宛名を「◯◯家」や「故人の名前」にしてしまうケースです。これだと役所で受理されないことがあります。
葬儀社への支払いの際は、必ず「申請する人(喪主)のフルネーム」で領収書をもらうようにしてください。
4-3. 不要なオプションを削る判断基準と葬儀社選びのポイント
最後にお伝えするのは、見積もりの無駄を削ぎ落とし、本当に信頼できる葬儀社を選ぶための極意です。 葬儀社の見積もりには、必ずと言っていいほど「オプション項目」が含まれています。
例えば、「湯灌(ゆかん・ご遺体の入浴)」や「エンバーミング(防腐処置)」、「ラストメイク」、「メモリアルコーナー(思い出の品展示)」などです。
これらは確かに素晴らしいサービスですが、必須ではありません。 担当者は善意で勧めてくれますが、全て受け入れていると数十万円のアップになってしまいます。
削るかどうかの判断基準は、「それが故人様らしく、ご遺族の心が癒やされるものか」という一点です。 「お風呂が好きだったから湯灌だけはしてあげたい」「祭壇の花は減らしてもいいから、好きだった音楽を流したい」など、優先順位をつけましょう。
そして、良い葬儀社かどうかを見極める最大のポイントは、こちらの「削りたい」「安くしたい」という要望に対して、「嫌な顔をせずに代替案を出してくれるか」です。
ダメな担当者は「それでは寂しくなりますよ」「皆様これくらいはされますよ」と、不安を煽って高いプランを維持しようとします。
対して、優秀で誠実な担当者は「では、お花は減らして、その分ご家族からの手紙を添えましょうか」といった、お金をかけずに心を込める工夫を提案してくれます。
葬儀は一度きりです。
「安かろう悪かろう」ではなく、「適正価格で最高のお見送り」を実現するために、遠慮せずこちらの要望を伝え、それに真摯に応えてくれるパートナーを選んでください。
まとめ

葬儀費用の「最終総額」が見積もりと乖離してしまう理由や、それを防ぐための具体的なチェックポイントについて解説してきました。
大切なポイントを改めて整理します。
- 葬儀費用の総額は「一式費用」+「飲食費」+「お布施」の3階建てで考える。
- 安置日数や参列者数による「変動費」のリスクを事前にシミュレーションする。
- 家族葬は「総額」は安いが、香典が少ないため「実質負担」は増える可能性がある。
- 必ず「相見積もり」を取り、公的な「給付金」の申請を忘れない。
葬儀の準備は、精神的にも肉体的にも負担がかかるものです。
だからこそ、お金の不安を少しでも早く解消し、心置きなく故人様との最期の時間を過ごしていただきたいと願っています。 この記事が、あなたとご家族にとって後悔のない、温かいお見送りの一助となれば幸いです。

